7月21日、国際日本文化研究センターにて「国際日本研究」コンソーシアム主催の国際ワークショップ「人文科学と社会科学の対話―国際日本研究の立場から」を開催し、研究者とオブザーバー計51名が参加しました。
「国際日本研究」コンソーシアムは、国際日本文化研究センターが代表幹事機関となり、2017年9月に発足したもので、「国際日本研究」や「国際日本学」を掲げた大学の研究所や大学院課程のニーズをくみ上げつつ、連携を進めようとする我が国初の試みです。学術的共同研究の推進、国際共同ワークショップ等の開催を通じて、「国際日本研究」の学問的基盤を構築しながら、若手研究者の育成も目的としています。
当日は、小松和彦・日文研所長の開会挨拶と、楠綾子・日文研准教授による趣旨説明の後、第一部として猪木武徳・日文研前所長・名誉教授の基調講演「社会科学における『人』と『人々』」が行われました。
第二部では、吉江弘和・日文研助教が総合司会を務め、コンソーシアム加盟機関から4名の教授が登壇し、それぞれ講演と質疑応答を行いました。講師とテーマは次の通りです。吉見俊哉氏・東京大学大学院情報学環教授「歴史の尺度:世代史と世界史を架橋する人文学のために」、金水敏・大阪大学大学院文学研究科教授「文学部長と経済学者との対話から―“社会”とどのように関わるか―」、樺島博志・東北大学大学院法学研究科研究科長・教授「日本の環境法の歴史と展開―水俣病事件訴訟を中心に」、細井浩一・立命館大学衣笠総合研究機構長・アート・リサーチセンター長・映像学部教授「“同床異夢”か“異楊同夢”か~日本文化の資源化に関する研究と政策」。
第三部・第四部 ラウンドテーブル・総合討議では、坪井秀人・日文研教授の司会の下、佐藤卓己・京都大学教育学研究科教授、荒木浩・日文研教授、松田利彦・日文研教授、小口雅史氏・法政大学文学部教授・国際日本学研究所所長が、各講演内容についてコメントした後、質疑応答および参加者全員による総合討議が行われました。討議のなかでは、グローバル社会における人文学と社会科学の立場と関係性の問題が論じられた一方で、人文学の有用性を議論すること自体を批判する意見も挙がりました。
閉会の挨拶では、河野至恩・上智大学国際教養学部国際教養学科准教授が、今回の議論におけるキーワードは「学際性」と「日本研究の価値」だったと総括。異質なディシプリンや環境が接点を持ち、「国際日本研究」の実質を中長期的視野で育てることが肝要ではないかと述べました。
本ワークショップでの発表と議論については、報告集として今年度に出版する予定です。