8月3日、大阪大学豊中キャンパス・待兼山会館にて、大阪大学大学院文学研究科グローバル日本研究クラスターと「国際日本研究」コンソーシアム共催による国際ワークショップ「海外における日本研究の動向と展望」が開催されました。当日は講師・教員に加え、大阪大学文学部の2回生から院生まで計50名が参加し、会場は朝から熱気に包まれました。
冒頭、宇野田尚哉・大阪大学文学部教授による趣旨説明と、安井眞奈美・日文研教授による講師紹介に続き、午前中の第1部「日本研究の新展開」がスタートしました。
まず、今年3月まで外国人研究員として日文研に滞在していた金容儀氏(韓国・全南大学校教授)による基調講演「韓国における日本研究の現状と展望―柳田国男・沖縄・「日本研究所」」が行われました。全南大学校に着任してから現在まで20年間の研究生活を振り返り、韓国に「乱立」する「日本研究所」の現状と課題を紹介した後、自らの研究テーマである柳田国男の著作と沖縄民俗それぞれについて、最近の研究動向と今後の展望を語りました。
なかでも印象に残ったのは、韓国社会では「日本学」に対する需要が多く、「日本研究所」で得た成果を社会に還元するシステムづくりが必要だという提言です。もう一つは、日本社会が危機に直面するたびに、柳田国男研究がリバイバルする、特に『遠野物語』への注目度が高まる、という興味深い指摘でした。
講演後は、北村毅・大阪大学文学部准教授によるコメントと質疑応答が行われ、続いて、金日林氏(日文研・外国人研究員)が、「「マンガ・アニメ共栄圏」を問い直す」という刺激的なタイトルで発表しました。日本のマンガ・アニメの影響力を強大化しようとする動きは、オタク文化がまだ可視化されていなかった大東亜共栄圏といかなる連続性を持っているか、というスケールの大きな問題提起に端を発した内容には、午後の総合討論の場でも活発な質問や意見が飛び交いました。
午後の第2部「日本研究の最前線」では、始めにガリア・ペトコヴァ氏(日文研・日本学術振興会研究員)が「日本の伝統芸能におけるジェンダー」と題して、男性中心の伝統芸能の世界においては特異な「おんなもの」ジャンルに焦点をあてました。特に、歌舞伎十八番の一つ「暫(しばらく)」の主役を女性に書き替え、18世紀に初演された「女暫」については、実際の舞台の映像を見せながら詳しく解説しました。
次に登壇したセシル・ラリ氏(日文研・日本学術振興会研究員)の発表タイトルは「From Amusement to Fire Prevention: The Kite Market of Ōji Inari Shrine」で、東京の王子稲荷神社と装束稲荷神社で毎年2月の初午の日に開かれる凧市について英語で紹介しました。コメンテーターの丸山泰明・天理大学文学部准教授も述べたとおり、美術史家の視点から和凧をアートとして捉え、その歴史的背景から現在の制作現場までを探究するユニークな内容でした。
最後は、うちとけた雰囲気の中で学生たちを交えた総合討論が繰り広げられました。