公募事業

令和5(2023)年度「国際日本研究」コンソーシアム事業公募 海外での調査・研究 実施報告書 Balzacchi de Moura Morais Fernanda(大阪大学大学院人文学研究科・博士前期 課程)

 いわゆる「デカセギ現象」からおおよそ30年が経った現在、在日ブラジル人の経験の歴史化が求められている中で、私は1990年代末のデカセギ2世であった若者たちによる「非行」を切り口に歴史研究に取り組んでいる。ここでいう「非行」とは、法的用語より広い意味という不良行為などを含む非行であり、日本社会にとっての「逸脱」の特徴を浮かび上がらせる枠組みであるとも捉えられる。「非行」に着目することによって、教育問題だけではなく、「デカセギ」として日本に移住した家族の移動に巻き込まれた子ども・若者たちがおかれていた社会状況をより包括的に捉えることが可能となる。

 このテーマは、まだ歴史が浅い分、オーラルヒストリー研究に取り組めることが大きな強みとなる。そこで、元非行少年への聞き取りと、当時在留していた日系ブラジル人研究者・教育者3名への聞き取りを実施した。確かに、ウェブ会議ツールを用いることで遠隔でも聞き取り調査を実施するのは不可能ではないが、ウェブ上でのインタビューには安定したネット環境や優れたマイクが必要不可欠であることと、そもそも対面より「対話」がしにくいことから聞き取り調査に支障が出やすい。本助成により、対面で4名への聞き取りを実施することができ、リオで開催された国際オーラルヒストリー学会での発表も成し遂げた。

 実施した調査により、当時の在日ブラジル人の若者が置かれていた社会状況と、排外主義的な側面を持つ日本の教育制度、ブラジル人の若者にとっての居場所の欠如と、違法であっても労働市場にブラジル人の若者を押し込める社会的力学などが、いかに一個人の人生の選択肢に影響を与えたのかを深堀りすることができた。インタビューした他3名は1997年に天理大学で開催された「在日日系人教育の諸問題に関するシンポジュウム」の企画に関わった、または参加した研究者や教育者であり、そこではエスニックメディア言説と異なり「非行」は教育問題として議論されなかったことが判明した。

 今後も在日ブラジル人の歴史的研究に取り組み、助成のおかげで明らかになったことを活かしていきたい。

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